基幹理工学部
数学科
Department of Mathematics
School of Fundamental Science and Engineering
早稲田大学 数学応用数理 談話会 第11回
日時
2017年06月15日 16:30 - 2017年06月15日 17:30
場所
早稲田大学  西早稲田キャンパス 63 号館 2 階 05 会議室
講演者
山口 佳三 先生 (北海道大学名誉教授)
講演題目
二階の接触幾何学
講演概要
よく知られているように、1未知関数の一階偏微分方程式系の解法は、幾何学的には、接触変換による1 階ジェットの空間すなわち接触多様体の部分多様体論と理解できる。この流れを引く、19世紀後半の2変数1未知関数の偏微分方程式(系)に対する幾何学的理論がMonge, Darboux, Goursat, E.Cartan 等によって進められた。この講演では、これらの研究の中で、特にE.Cartan の研究を、多変数化して、「二階の接触幾何学」として理解する試みについて述べたい。E.Cartan は、有名な5変数の論文で、次の2つのクラスの2 変数1未知関数偏微分方程式(系)の求積の問題を論じている:
(A) 2つの方程式で定義される過剰決定系でinvolutive なもの。
(B) 放物型単独方程式で、そのMonge 系が完全積分可能なもの。
さらに、E.Cartan は、これらの偏微分方程式(系)の接触同値問題が、5変数空間上のランクが2ないし3の微分式系(Pfaff 系)の同値問題に還元されることを示している。また、E.Cartan は、5 変数空間上のランク2およびランク3のgeneric な微分式系の幾何学に対してCartan 接続を構成している。現代のことばでいえば、これらの幾何がG2-型のパラボリック幾何学であることを示した。その中で、これらの幾何のFlat model を与える微分式系に対応するものとして次の偏微分方程式(系)を得ている:
(A) \frac{\partial^2 z}{\partial x^2}=\frac{1}{3}(\frac{\partial^2 z}{\partial y^2})^3, \frac{\partial^2 z}{\partial x \partial y}=\frac{1}{2}(\frac{\partial^2 z}{\partial y^2})^2.
(B) 9r^2+12t^2(rt-s^2)+32s^3-36rst=0
これらの方程式は共通して、無限小接触自己同型環が、14次元例外型単純リー環G2 と同型である。
この講演では、これらの様子を述べ、例示として、B3-モデルに触れたい。ここでの道具立ては、微分式系の幾何学であり、現在パラボリック幾何学と呼ばれることの多い田中理論の活躍の舞台でもある。

* 16:00-16:30はtea-timeです.